50男の働き方改革~なるか、自営の道~

平成最後の31年4月末、30年近く勤めた会社を希望退職。再就職せず、生きることを目指す50男の記録

【自営業9】 家で働き、父娘ともに互いの姿が見えてきた。

 長女の在宅勤務が増え、大学4回の次女の外出機会が激減するなか、2人と顔を会わせる機会が格段に増えました。多くの会社で在宅勤務が奨励されていますので、在宅作業が中心の自営業者だけでなく、多くの会社員の方々も同じような経験をされていると思います。

 私の場合、上の子が中学3年生のころから単身赴任が多くなりました。同じ家に住み始めてからも私の方が不規則な勤務時間だった上に、子供たちが大きくなって外出機会が増えた結果、小さい時に比べて顔を会わせることが格段に減っていました。「子供と屈託なく正面から向き合っていられるのは、小学生ぐらいまでだな」って改めて思います。

 そんな中で訪れた常時在宅期間。最初は、一人で在宅勤務をしていた関係から、娘たちを非常にうっとうしく思っていたのですが、どうしても集中したいときは喫茶店に行ったり、外で電話したりと互いに気を使うようになって、割とストレスが減りました。

 そして、昼飯を作ってあげたりすると、娘が料理に目覚めて昼飯だけでなく晩飯も作ってくれたりして、会話も増え出します。ZOOM飲み会だというので、部屋から追い出しをくらい、しばらくして自分に部屋に戻ると、空き缶が散乱。これにはいい加減にせえよと思いましたが、それでも別の機会には「こいつ、いつもこんな感じで飲んでるのか」と思え、それはそれでいい機会となりました。

 そして、なんとなく、時事問題などについて質問を受けることが多くなったように思います。女だからというのがあるかもしれませんが、わりと自分のこともしゃべってくれます。半年ほど東京に残っていた妻子を単身赴任先の大阪に呼び戻した際の話を、当時中3だった長女が口にしました。

 「大阪に来た当初、関西スーパーの入り口のお好み焼き屋、あそこに入った時はこれ大丈夫なんかと思ったわ」

 そんな慨嘆を口にしました。こちらはすっかり忘れていたので、「そんなことあったかな」と思う一方で、「この娘はこの娘で苦労したもんな」と改めて思いました。

 幸いなことに、次女はそれなりの会社に内定しました。新型コロナウイルスの影響で新卒採用の枠は大幅に狭まっているようなので、これはありがたいことです。ただ、今の3回生の就活は今年よりももっと厳しくなると聞いた時にはぞっとしました。

 

 そんな会話もたぶん、在宅時間が長くないと起こらなかっただろうな、と思っています。でも、そんな会話の時間が増えたことよりいいと思えるのは、働く姿を見せられたことです。文書を書いたり、メールを書いたり、電話をしたりといった、たわいもないことなのですが、「お父さんって、大人って、こんな感じで仕事してるんや」と思ってもらえてるような気がするのです。

 

 中小企業を中心とした事業承継のことについて「取材して書いてもらえないか」と頼まれたことがありました。残念ながら半年ほど前からペンディング状態が続いているのですが、それまでの間にいろいろ話を聞いたり読んだりして、「子供に親の仕事を見せてきたか、どうか」が事業承継の可否の重要な要素ということを知りました。

 親の働く姿を見たという経験は私にはほとんどありません。サラリーマンでしたから。話を聞いたり、写真を見たりということぐらいはありましたが、自営業者とか、働く現場が家から近い人とは違います。会社の名前とかたまに聞く肩書とか、そんなことから、「こんなことしてるのかな」と想像するぐらいでした。

 ですが、自営業者の場合は常に働く姿を見せられる。それは時にかっこ悪い姿かもしれませんが、それはそれで子供の糧にはなるでしょう。子供たちまでもが家で過ごす機会が増え、最初は子供の前でいろいろと電話をするのは「どうもな」というのがあったのですが、今は抵抗がありません。

 そして、娘たちと接する時間が長くなればなるほど、そこはかとなく「ちゃんとしたお父さん、親でありたいな」という気持ちが強くなっているような気がします。

 新型コロナウイルス、それに対する施策に対してはいろいろと思うところがありますが、環境が変わることで、同じ環境だと得られなかった体験が得られるというのは、貴重だと思います。そう、だから、娘に恥ずかしい気持ちを持たないで済むよう頑張らなれば。。