50男の働き方改革~なるか、自営の道~

平成最後の31年4月末、30年近く勤めた会社を希望退職。再就職せず、生きることを目指す50男の記録

【自営業7】働く意識を変えるリモートワーク、自営業意識の醸成で社会が変わる?

 非常事態宣言から1カ月余り。ようやく新型コロナウイルスの新規感染者が顕著に減り始めました。PCR検査の実施件数が増え始めているので、この減少は本物だろうと思います。その一方で、リモートワーク、在宅勤務の動きはとどまらないとも思っていました。

 しかし、昨日5月11日、その見方以上にドラスティックな動きが始まっていることをニュースで知りました。東京のベンチャー企業がオフィス閉鎖を決めたというのです。

コロナの収束傾向が顕著になっても、再燃の可能性は残る。である以上、リモートワークができる人たちは、リモートワークを続ける。そういう状況になるとは思っていたのですが、これを奇貨として、或いはこれに乗じてというべきか、オフィスをなくしてしまうとは驚きました。

 この会社はもともと社員の半分ぐらいが在宅勤務をしていたとのことでした。だからできるという側面はあります。オフィス代の節約、従業員の交通費の節約にもつながるから、会社としてオフィス閉鎖の利益は大きい。従業員にとっても毎日の長時間通勤に煩わされることがなくなるため、とてもありがたいことだと思います。

 

 入社3年目のうちの長女も今、半分くらいは在宅勤務です。現場がある仕事なので外に出ることもありますし、上司の決裁が必要だから出社する必要もあるというので、ずっと在宅の日は半分以下の感じですが、ここしばらくは在宅勤務が奨励され続けるようです。

 長女の会社は、オフィスの閉鎖をすることはないでしょう。

 「上司の決裁が必要だから出社」という旧態がある以上、とてもオフィスをなくせないと思うからですが、それでも働くことの意識改革にはつながると思うのです。

 それは、つい最近まで声高に叫ばれていた働き方改革といった表明的かつ形式的なものではない変化をもたらすと思います。

 長女は在宅勤務時に化粧をしません。化粧品の売上が落ちたとのニュースを見ましたが、むべなるかな。化粧をしないどころか、パジャマ姿で勤務、眠くなったら布団に潜り込むといった体たらくです。

 まあ、私は勤務時間中に昼寝がしょっちゅうだった人間なので(そういうことが認めらられる雰囲気があったので)、長女のことを責められません。いや、むしろ、「それでいいんじゃないの?!」と心の中で思っています。

 「やるべきことをちゃんとやってればOK」「誰にも迷惑かけてないんでしょ!?」

 そんな風に思ってしまうのです。

 3年目だから、ある程度仕事の流れもわかっているし、何が大切か、仕事の肝が何かもちゃんとわかっているようなので、それほど下手を打たない感じなんです。だから、「いいやんか」と思うのですが、一方で、そういう意識の社員がいっぱい出てきたら、「会社は困るだろうな」とも思います。

 

 以前、バーで隣り合った60過ぎの男性から、「自営業は大変ですよ」「(上司からの指示がなくても)自分で何をするかを決めないといけないから」と言われた時、「ずっと書く仕事をしてたから、大丈夫です」と言ったら、妙に納得されたことを覚えています。「自ら書くネタを探す」のが仕事でした。この作業には、上司云々はあまり関係ないので、今も「今すべきは何か」や「儲けられそうなネタは何か。売り上げが立ちそうな方策は何か。そんなネタが手ごまとしていくつあるか」なんて意識が常にあります。

 そして、そんな意識が在宅勤務をする人には求められていると思います。長女を見ていて、そんな気がします。自ら仕事を切り盛りできない人は困りますし、実はすべき仕事が大してなかった人も困るでしょう。そういう仕事の負荷の調整がこれを機に進みそうな気がしますが、それ以上の奥深い所での大きな揺れが、在宅勤務による意識変革によって起こりそうな気がするのです。

 

 もし、自営業者と同じように、社員一人ひとりが自ら仕事を切り盛りするだけでなく、探し出し始めたらどうなるか。あるいは逆に、在宅をいいことに副業を見つけてそれにいそしみ始めたらどうなるか。前者は数年後、あるいはもっと先かもしれませんが、転職、独立を追い求めるような気がします。後者も独立自営の道を本格的に模索するかもしれません。

 オフィス閉鎖を決めた会社は、「社(やしろ)=みんなが集まる場所」という意味ではすでに会社ではありません。仕事をする人たち、仕事ができる人たちが、1人ではできないより大きな仕事をするためだけに一緒に仕事をしているだけです。一緒に仕事をしているわけですから、仕事をする中においての喜びや苦しみとか悲しみを分かち合うことはあるでしょうが、社の中のウェットな関係はなく、常にドライな気がします。自営業者同士の、ねとっとしたところもありつつも、究極的にはドライにならざるを得ない関係が社員同士の間にもあるような気がするのです。いや、オフィスのない会社の社員の関係は、自営業者同士の関係よりもはるかにドライなようにも思えます。

 

 でも、そのドライさが、日本の会社には求められているように思います。少なくとも、旧態依然とした在りようはとても非効率という状況になっています。つい先日、ZOOMを使った酒蔵による試飲会&蔵見学会に参加する機会があったのですが、なかなか楽しかったです。ゴールデンウイーク中、オンライン帰省をした娘たちはとても楽しそうでした。

 果たしてハンコが必要なのか。果たして鳩首そろえた会議が必要なのか。果たしてオフィスに集う必要があるのか。そんな必要性の有無、していることの是非を追究する姿勢が会社の中に生まれない限り、日本の中では通用しても、世界の中では取り残される。

 そんなことをつい思ったりするのは、悲しいか哉、自営業における本丸の準備がなかなか整わず、出発できないからなのかもしれません。売り上げゼロの貯金食いつぶし状態が続く今からしたら、会社員の安定は驚くべきものです。