50男の働き方改革~なるか、自営の道~

平成最後の31年4月末、30年近く勤めた会社を希望退職。再就職せず、生きることを目指す50男の記録

【自営業8】心構えは「絶対できる」なのか

 前の会社でのこと。職場の正社員だれもが一目置くアラフォーの女性がいました。バイトとして働いていましたが、私がその職場にいた時には本来の庶務の職務を超えて働いていました。法的に、契約的にどうなのかというのはさておき、彼女はその庶務以外の仕事が好きでしたし、合ってましたし、職場としても助かりました。

 

 彼女は楽しく働き、彼女が庶務以外の仕事をしてくれていることで、職場全体の力が2割増し、3割増しになっていたと思います。とても、ありがたい存在でした。

 

 その彼女が言ったことがあります。

 

 「自分でやるような人は、我が道を行く人。その人が言っていることはたいてい、何を言っているかわからないけど、パワーだけはあって、そのパワーで人を惹きつけてる」

 

 そんな内容でした。「自分で何かを起こすなんてことは簡単ではない」という諫めの言葉でした。言葉は悪いですが、「きちがい」のような人でないと無理ーという理解をしてました。

 

 「きちがい」。「それは無理だ」と思いました。なぜ、そんな風に考えたかというと、その職場に赴任する前から、「こんなことできないか」という、ビジネスモデルを温め続けていたからです。

 

 そのビジネスモデルの実現は、イニシャルコストが大きすぎること、本格的にやってくれる人が1人か2人はいないと成り立たないこと、協力者になってくれそうな人に逃げられたことであきらめました。「成功が保証されていないのに、1000万円ほどの初期投資なんて絶対無理」とも思ってしまいました。

 

 ハンガリーからの輸入ビジネスに可能性を見いだせたこともあります。しかし、輸入ビジネスがあろうとなかろうと、まず間違いなく、踏み出せてなかったでしょう。

 そういう自分の心の動きを踏まえると、「きちがい」のような心持ち、気概をもてない限りは「起業なんてできない」と思うのです。

 

 つまり、彼女は「やっぱり、正しいことを言っていた」と思います。

 

 ただ、今の自分はどうなのだろうとも思います。いまやろうとしている輸入ビジネスなんて、私は完全な門外漢。前の仕事で培ってきた「書く」ことを生かせる場面がゼロではないとはいえ、輸入の「ゆ」の字にもかかわりのない仕事でした。倉庫とか通関とか、まったくわからない。無謀です。それでもやり始めたのは、「おもしろい」と思ってくれた人が複数いたこと、商材への評価が高そうだったこと、そしてイニシャルコストが数百万円で済みそうだったからです。

 

 不安を抑え、「できる」と信じ、やるべきことを着実にやる。それでできなかったときのことは考えない。それって、ある種の「きちがい」の所業なのかと思います。

 

 彼女は前の職場がなくなった結果、仕事を失いました。しかし、その仕事ぶりが同業他社に評価されていました。結果、同業他社への就職を果たしました。

 

 地方とはいえ、アラフォーでの再就職。私なんか品出しバイトさえ不合格だったのに。。でも、「あの時の職場のみんなの評価は間違ってなかった」ことには勇気づけられました。私らの見立ては間違ってなかったと証明されたからです。

 

 輸入の実務経験どころか知識ゼロ、前職はビジネスセンスも必要のなかったのでビジネスセンスもゼロ。徒手空拳での輸入業務なんて、狂気の沙汰だと思います。

 

 でも、この取り組みを始めて、時折に胸に去来するこの言葉に助けられています。

 

 「世のは 何とも 言わば言え 我なす事は 我のみぞ知る

 

 ある意味、独善的な、すごく身勝手な物言いです。

 

 でも、この句を詠んだとされる10代後半の坂本龍馬がその時、「何を目指しているか」「なぜそれを目指しているか」を説明することは困難だったでしょう。説明しても、周りはわからない。「危ない奴」のレッテルを貼られて牢獄入りだったかもしれません。そうである以上、坂本龍馬のこの慨嘆は間違いなく正しく、自分勝手でもなんでもないと思うのです。

 

 そんな周囲と自分との考えのすり合わせができない時代でないのですから、坂本龍馬のこの言葉にすがるのはどうかとも思います。所詮、私は勝手な人間なのかとも思います。いや、「所詮、人間なんてみんな身勝手」と開き直るようなところもあります。すり合わせのできない独善的な人間なのでしょう。

 

 私はなぜハンガリーからの輸入事業なんてことを始めてしまったのか。

 そんなことも思いますが、後悔しないと思えるのは、その事業、その事業から生まれる派生的な出来事に夢を感じられるからです。

 

 「バイトさえ受からないから、夢にすがってるだけやろ」

 「いままで、逸失利益を含めてどんだけ失ってきた? アホちゃうか!」

 まあ、そうかもしれませんね。

 でも、いいんです。

 儚いのが人の夢です。