50男の働き方改革~なるか、自営の道~

平成最後の31年4月末、30年近く勤めた会社を希望退職。再就職せず、生きることを目指す50男の記録

【働き方改革13】そちらも「亭主元気で留守がいい」のね、やっぱり。。

 先日、よくいくバーで、たまに話をする年配の男性の隣に座る機会がありました。たまに話したことがあるといっても、何をしているのかについてはまったく知りません。ただ、身にまとっている穏やかな雰囲気から、「もう定年になっているんだろうな」とは思っていました。

 ところが、雑談するうちに、男性が勤めている会社の慰安旅行の話になり、「あれっ」となって思わず、「まだ働いているんですか」と聞いてしまいました。

 すると、64歳だけど、定年が65歳の会社だからまだ現役とのことでした。そして、問わず語り、「今の会社が7つ目」と言って、それまでの転職歴を語ってくれました。私が失業中の身であることは知っているはずなので、おそらくそれを踏まえていろいろと話をしてくれたのだと思います。

 

 最初に勤めたのは大手メーカー。多角経営の一貫として始めていた半導体分野に技術系として入ったのですが、中国、台湾の攻勢には耐えられないと判断して退職し、転職人生が始まったとのことでした。退職の前には毎回、管理職や技術職に特化して会社とのマッチングを行う人材銀行で次を決めていたそうです。しかし、50歳を過ぎて初めて次がみつからないままに退職、初めて失業手当を受給したそうです。「50を過ぎると、全然違う」との言葉に、「やっぱり、そうなのね」と心の中がどんよりしました。

 

 ただ、そんな中でおもしろかったのは、社風に関する話。今の会社は社内放送で社長が部下を呼びつける際に名前で呼ばず、「製造部のデブ」とか「カンコウヘン」とか、パワハラモラハラ、セクハラ満載なんだそうですが、月に1度は会社が社員1人当たり4000円の懇親会費を出してくれるそうです。社員は気の合うもの同士で外に飲みに行き、うさを晴らしたり、情報交換したりするそうです。社長の田舎から大量の野菜が送られて、社員に持って帰らせることも頻繁にあるそうです。そして、儲けたら、ボーナスをたいそうはずみ、高卒入社の男性は10年で1000万円の貯金をして、家を買ったそうです。

 そんな風なので、パワハラモラハラ、セクハラの嵐の中にあっても社員はいきいきとして辞めないそうですが、この男性が一つ前に勤めていた会社は真逆で、社員同士が交流する、情報交換することをできるだけ避けさせていたそうです。社員が結託して組合を作って会社にたてつくことを、オーナー社長が恐れたためのようですが、この男性はそんな息苦しさに耐えられず、1年でその会社を辞めたそうです。

 

 「やはり、社内の雰囲気、環境って何より大事ですね」と相槌を打った私ですが、1つだけこの男性に提案したことがありました。

 

 それは、あまりにも会社の帰りが遅いので、早く帰るようにするということです。毎日午前5時40分に起きて、帰宅が10時。そこからご飯を食べて過ごすと、睡眠時間は4、5時間になってしまうというのです。とても、64歳の働き方とは思えませんでした。

 夜の9時近くまで毎日残る理由もいただけません。「家族的な会社というか、社長がみんなの仕事が終わるまで帰らない人だから、全員が全員の仕事が終わるまで帰れない」というのです。終業時間である午後5時半とかになれば、自分の仕事が終わった人はさっさと帰る。そんな当たり前のことができないから、遅くまで無駄に時間をつぶしているというのです。

 

 この男性、「せめて、1時間ほど早く帰りたい」とのことでしたが、午後5時半には帰りたくないようでした。来年の定年後については「私に代わる人が社内にいないので希望すればいつまでも働ける状況にある」とのこと。「妻は今でさえ、土日にゆっくりしたい私を疎ましく思っているのに、平日までごろごろしてるとなると、どうなるか。それを考えると、65歳を過ぎても会社に置いとかせてもらえるのなら、今の会社にいたいですね」と。

 

 辞めてからこの方、私の妻は如実に不機嫌です。もろもろ、不機嫌の原因はあるのでしょうが、しかし、家に一緒にいる時間が増えていることが何よりの原因かもしれません。いや、やっぱり、そうなんだと思います。「亭主元気で留守がいい」。キンチョーのCMで知ったこの言葉が、私の眼前に突き付けられています。