50男の働き方改革~なるか、自営の道~

平成最後の31年4月末、30年近く勤めた会社を希望退職。再就職せず、生きることを目指す50男の記録

【働き方改革5】【ハンガリー6】「手に職を持つ強み」をハンガリーで実感するとは

 「手取り15万円、20万円未満なんて当たり前ですよ」

 ハンガリー料理屋で食事を共にした25歳の女性同宿人は、結婚しない同世代の背景にある状況を端的に説明した。

 「5年、10年経ったら、給料が上がるという期待とか希望はもてないの?」と問いかけたら、「何年働いても上がらないんですもん。それどころか、下がることもあるんですよ」との答えが返ってきた。

 

 バブル入社組として、会社に入ってすぐに急激な基本給の引き上げ、その後も着実なベアが続いた。働き方がブラックだったとはいえ、その時々の給料にも、給料の先行きにも長年にわたって不満をもたなかった身として、何も言い返せず、納得するしかなかった。

 

 彼女は高校卒業前に「それほどしたいことがない」ことを自認。「なるべく早く働こう」と、専門学校に行って2年間で知識と技量を身に着けて就職したという。同級生の中には、特にやりたいことがないのに漫然と大学に行った子も多かった。そして、そういう子の中に、大学を卒業したのにハローワークで仕事探ししている人がいたという。

 

 「私は体壊しちゃって会社を辞めたけど、20歳からの4年間で貯めたお金で海外に来れている。これから1年間はワーキングホリデーで働いてその間もヨーロッパのあちこちにいける。1年後には日本に帰って就職するつもり」

 

 同じハローワークで職を探しても、漫然と大学の4年間を過ごした人間と、手に職があって、なおかつ英語ができて、海外での勤務経験のある人間。比べたら確実に後者の方が有利だろう。

 

 この食事の席にはホステルの管理人もいた。彼曰く「旅する人の多くは手に職をもっている」。確かに、この日にイギリスから来た若者も調理師だった。日本を出て2か月と言っていた。半月前にはイギリスで強盗にあって財布からパスポートからすべての貴重品を奪われ、その数日後には祭りに参加して足を骨折するという悲運に見舞われながらも、「1年は旅をする」とあっけらかんと話した。

 この若者も、稼ぐことに不安はないのだろう。旅先では野宿をすることも多く、お金が足りなくなると、大道芸のように悟空の真似をしたり、筆で字を書いたりして、稼いでいるという。別の男は介護士の先行きに不安を覚え、とりあえず2か月の長旅の途中でホステルに寄っていた。この男も、いざとなれば介護士としての就職に微塵の懸念もない。

 

 ホステルの管理人が話したカタール航空キャビンアテンダントの話も、日本の感覚と違った。ホステルの常連というこのCAは、別の航空会社から転籍してカタール航空に就職したが、さらによい航空会社での就職を目指しているという。そこには常に、緊張感と向上心があるはずだ。

 

  大学卒業1年後に就職した会社で「書く」ことを生業とし、29年間を過ごしてきた私。ライターとしていくばくかは稼げるだろうが、退社直前の給料の半分をもらえたらいい方だろう。そう考えると、やはり、漫然と過ごしてきたと反省せざるを得ないのだろう。